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ゼミの全記録
●2010年度
テーマ:「らしさ」の向こう側へ
国際「文化」学科の最終年度です。そこで、改めて「文化」とは何か、ということを考えてみると、その「掴み所のなさ」が立ち現れてきますが、それでも学者は頑張ってそれを掴もうとしてきました。このゼミでは、主にその「掴み方」を社会学的思考や歴史学的思考から学んでいきたいと思います。そこから、我々が漠然と感じている「○○らしさ」の正体を見ていこうと思います(男らしさ、女らしさ、日本人らしさ、その時代らしさetc.)。その作業のためには、色々なものと比較しつつ、その「特殊性」および他の事例・事象にも通じる「普遍性」を腑分けする必要があります。そのような「眼力」を養いつつ、一つのテーマに絞ることなく、さまざまなジャンルのものを「乱読」したいと思っています。
なお、後期では主に個人発表を中心にゼミを運営する予定です。
テキスト(予定):
上野千鶴子編『構築主義とは何か』勁草書房、2001年。
栗山茂久編『近代日本の身体感覚』青弓社、2004年。
関根康正編『排除する社会・受容する社会』吉川弘文館、2007年。
伊藤公雄編『マンガのなかの〈他者〉』臨川書店、2008年。
成実弘至編『コスプレ化する社会』せりか書房、2009年。
宮台真司編『「男らしさ」の快楽』勁草書房、2009年。
◇2010年度最終レポート一覧
・現代における若者と音楽の関係
・江戸浅草寺の開帳
・新しい観光の一形態としてのグリーンツーリズム―奈良・京都・滋賀の事例から─
・江戸時代の仲人―『世間仲人気質』を中心とした比較から
・「若者右傾化」論の批判的検討
・聖書から見るキリスト教における女性観─新約聖書・マグダラのマリア編─
・アメリカにおけるイスラーム組織による活動─非イスラーム教徒との相互理解に向けて─
・日本人とスピリチュアリティ─「心のノート」を中心に─
・琵琶湖疏水事業と京都の景観
・慶安三年と宝永二年の伊勢群参
・現代フランスのムスリム移民統合問題にみる「共和国」理念の一考察
●2009年度
授業概要/テーマ:生命・身体の政治学――生命倫理・リプロダクションヘルス&ライツ・宗教性
本ゼミでは、最近話題となっている生命倫理をめぐる問題系を中心に、それがどのように現在の我々の生命・身体をめぐる「政治学politics」を形作っているかを探ることを目的とする。宗教無き現代、という常套句があるが、実は医療現場など「生命」を扱う現場において広義の「宗教性」が噴出しているのを我々は確認できるだろう。この演習ではそれを確認しつつ、既存の宗教との共通点、差異、ジェンダーの問題などにも切り込んでいく。
なお、このゼミでは後期において、それぞれが一番興味を持っている文化的事象について調べ、その成果をみんなの前で発表することにしている。4回生諸君は主に卒論のことを、3回生諸君は興味の赴くまま自分で調べていくこと。それをまとめたものが、ゼミの最終レポートとなる。
なお、この演習は値の張る書籍を多少購入してもらうので、受講者はその覚悟をしておくこと。
講読予定書籍
・荻野美穂『「家族計画」への道』岩波書店、2008年。
・W.ラフルーア『水子』青木書店、2006年。
・上田昌文・渡部麻衣子編『エンハンスメント論争』社会評論社、2008年。
・舘かおる編『テクノ・バイオ・ポリティクス』作品社、2008年。
・高橋都・一ノ瀬正樹編『死生学5』東京大学出版会、2008年。
・T.ノーグレン『中絶と避妊の政治学』青木書店、2008年。
など
◇2009年度最終レポート一覧
(3回生)
・『諸国百物語』から見る近世初期の女性観
・フィールドワークが伝える異文化―ヤノマミ族研究の例を通して
・憑きものからみる日本の神観―犬神を通して―
・古代日本における水銀の重要性
・旅の文化史―昔の巡礼と今の観光
・日本における通信販売の普及―1970~80年代のカタログ雑誌から
・体験をもとめる社会―現代廃墟ブームの考察を通して―
・人々を変えていくモノ―トラウマの考察から―
・古代エジプトから死生観を
・ホスピスから考える終末期医療
・少年犯罪と家庭環境
・御霊の発生
(4回生)
・内山基主筆時代の『少女の友』
・ディズニー・アニメーションとジェンダー―「ムーラン」におけるフェミニズムの危険性―
・明治20年代における君が代の普及
・明治28年のイベントと観光都市京都
・近代の浄土真宗者 清沢満史―精神主義―
・日本における出生前診断―新聞報道からの一考察―
・現代の若者の恋愛・結婚観について―話題の草食系男子を中心に―
・動物供養に見る日本人の動物観
●2008年度
(授業概要/テーマ)
「文化」の読み書き―「文化研究」再考―
自文化をどのように客観視し、また他文化をどのように記述するかという問題は、広義の「文化研究」においては、青臭いが永遠の課題である(この記述の「政治性」がサイードのオリエンタリズム批判以来問題視されているのは周知の通りである)。
このゼミでは上記のような問題意識の下、近年に発行された何冊かの「文化研究」(分野は様々)の書籍を輪読し、その「作法」を再考することを目的とする。
なお、このゼミでは後期において、それぞれが一番興味を持っている文化的事象について調べ、その成果をみんなの前で発表することにしている。4回生諸君 は主に卒論のことを、3回生諸君は興味の赴くまま自分で調べていくこと。それをまとめたものが、ゼミの最終レポートとなる。
なお、この演習は値の張る書籍を購入してもらうので、受講者はその覚悟をしておくこと。
講読書籍
林香里『「冬ソナ」にハマった私たち』文春新書、2005年。
ジョセフ・ヘニング(空井護訳)『アメリカ文化の日本経験』みすず書房、2005年。
大澤真幸『不可能性の時代』岩波書店、2008年。
◇2008年度最終レポート一覧
(3年生)
・日本国憲法第九条と自衛権・自衛力について
・日本の特徴をもったキリスト教―五島隠れキリシタン―
・05年秋の暴動にみるフランスの郊外問題
・女性ファッション雑誌の比較―赤文字系雑誌とストリート系雑誌のファッションの捉え方の違い―
・近年の少年非行に対する人々の意識とその実態
・日本の教育の変容―困った親はなぜ生まれたか―
(4年生)
・「無宗教」と日本人
・明治期における日本人の対外観と自意識―日本人論を中心に―
・小学校における第3期国定歴史教科書
・岸和田九月祭礼と地域社会
・『宝物集』愛別離苦の解釈にみる平康頼の創意
・京都市観光と外国人観光客
・中絶論争からみるアメリカ社会―アメリカ人の道徳的価値観を探る―
・現代の京都の地蔵盆について
・日本の心理療法―吉本内観を中心に―
●2007年度
(授業概要/テーマ)癒し・スピリチュアリティ再考
「癒し」「スピリチュアリティ(霊性)」という言葉は既に日常語彙として定着し、テレビ番組や書籍においてもが題材となったものを我々は日頃意識するしな いに拘わらず、それを「消費」している現状があろう。このゼミではそのような「癒し」や「スピリチュアリティ」をめぐる昨今の動向を振り返り、それと近接 した分野であるセラピー文化、特に「心理(学)主義」を扱う。
なお、このゼミでは後期において、それぞれが一番興味を持っている文化的事象について調べ、その成果をみんなの前で発表する。4回生諸君は主に卒論のことを、3回生諸君は興味の赴くまま自分で調べていくこと。それをまとめたものが、最終レポートとなる。
【講読予定書籍】
伊藤雅之他編『スピリチュアリティの社会学』世界思想社、2004年。
島薗進『〈癒す知〉の系譜』吉川弘文館、2003年。
森真一『自己コントロールの檻:感情マネジメント社会の現実』講談社、2000年。など
◇2007年度最終レポート一覧
(3年生)
・戦国・織豊期の都市と人々―イエズス会宣教師の視点から―
・戦隊ヒーローにおける女性―不動の赤と、変化するピンク―
・戦争犯罪の原因
・小学校における歴史教科書の移り変わり―明治から終戦まで―
・現代社会における化粧の意味
・源信の『往生要集』とそれに基づく地獄絵における「地獄」
・アメリカの原理主義
・青年期のアイデンティティ達成に影響を与える日本人の精神性
・『米欧回覧実記』における近代日本人のフランス文化観
・現代の地蔵盆の在り方について―市内の地蔵盆を中心に―
・近代アイルランド人の言語的アイデンティティ
(4年生)
・「世界連邦運動」―その歴史と現状―
・犯罪に見る現代の少年の対人感情・対人関係について
・報道傾向から見る各マスメディアのスポーツに対する価値観の違い―ジダンの頭突き事件とそれを巡る報道からの一考察―
・マンガのなかのジェンダー観
・『春色梅児誉美』以下人情本における人物造形の特徴
・ジャーナリズムの「職業倫理」を模索する―事件報道に見る発達障害―
・近代小学校における洋装化の過程―京都市を例にして―
・「国家神道」の成立と民衆への影響
・日本におけるジャズ言説―70年代から現在まで―
●2006年度
(授業概要/テーマ)近代日本の「セクシュアリティ」「ジェンダー」について
「セクシュアリティ」とは訳しにくい言葉ですが、性に関わる現象、その人の性的志向性などを広く表す言葉です。「性」というある意味「自然」なものが実 は「文化的」に編まれた観念の塊であることは、これまでの学問が明らかにしてきたとおりです(勿論生物学的な基礎は無視できない重みを持っていて、それが セクシュアリティ研究の大きな課題なのですが)。
このゼミでは、特に日本の近現代の「セクシュアリティ」「ジェンダー」のありかたを振り返ってみることで、現代を生きる我々自身をreflexiveに考えることを目的とします。
講読書籍
1)『青鞜』『山川菊栄論説集』『与謝野晶子論説集』『伊藤野枝論説集』など、大正期の『青鞜』をめぐる母性・恋愛に関する論争を読み込む
2)セクシュアリティ研究の基礎を入門書で(岩波講座現代社会学『ジェンダーの社会学』『セクシュアリティの社会学』から何本か選んで読む)
3)川村邦光『性家族の誕生』ちくま学芸文庫、2004年。
◇2006年度最終レポート一覧
(3年生)
・オタクについて―「萌え」とは何なのかを中心に―
・サッカーにおける差別・対立・衝突
・少年マンガの中の女性
・京女―ことばにやどる女性像―
・現代ジャーナリズムにおける「客観報道」の落とし穴
・女人禁制の現状とその“伝統”
・カナダ地域における毛皮交易とその影響
(4年生)
・日本における少子化―その背景と対応策について
・近代日本における母役割の重視と性別役割分業観の浸透
・戦略的本質主義としての「改宗」―B.R.アンベードカルの不可触民解放運動と「新仏教」運動―
・Graded Direct Methodと英語教育
・19世紀パリにおける近代消費意識の形成
・『紅一点論』の再考
・「シャーロック・ホームズ」シリーズにおける19世紀ヴィクトリア朝社会階級観
・現代バリ・ヒンドゥー教徒の宗教意識
・「ニート」言説から見る若年層批判の仕組み
●2005年度
(授業概要/テーマ)「植民地」をめぐって-ポストコロニアル
「ポストコロニアリズム」という言葉をみなさんは聞いたことがあるかも知れないが、宗教学や文化人類学は、その出自を辿れば欧米の「植民地支配」に遡る ことができる。このゼミではサイードが名著『オリエンタリズム』で指摘した「学問」の植民地支配的な性格そのものをも研究対象にして、昨今文化を研究する 際において問題化している事象を検討したい。
講読書籍
1)本橋哲也『ポストコロニアル』岩波書店、2005年。
2)テッサ・モーリス=鈴木『辺境から眺める-アイヌが経験する近代』みすず書房、2000年。
3)鄭暎恵『<民が代>斉唱』岩波書店、2003年。
◇2005年度最終レポート一覧
(3年生)
・出生前診断の現状と問題点―人工妊娠中絶と関連させながら―
・ロックの精神性
・少子化――その背景と対策について
・「近代家族」と日本近代の家族の姿
・ヴァイキングの都市と商業
・B.R.アンベードカルの「不可触民」解放と「新仏教」運動
・世界初の百貨店〈ボン・マルシェ〉の誕生
・声明―近世芸能の母体―
・観光学と京都
・ロスチャイルド家―マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドと五人の息子たち
・日本の現代音楽とその変遷―歌謡曲からJポップへ
・忍者の実体と盛衰
(4年生)
・現在のスクールカウンセラー像
・若者支援と若年労働問題
・現在の有田焼産業と十四代金ヶ江三平衛
・中世盛期フィレンツェの病院施設―サンタ・マリア・ヌオヴァ病院―
・越境する外国人売春婦―日本における売買春の背景―
・日本の二輪産業と社会
・摂食障害と痩せをもとめる社会風潮
●2004年度
(授業概要/テーマ)原理主義・終末論・ナショナリズム
昨今は、「宗教」の側面から民族紛争やテロリズムが語られ、その背後には不気味な終末論が存在するという話をよく聞きます。この演習では、いわゆる原理 主義、そして歴史上現れた終末論に関する研究書を読み、宗教が現代社会に持つ意味について考察しつつ、「9・11」後の世界を考えるきっかけにしたいと思 います。なお、宗教とナショナリズムの関係についての研究書も参考にしたいと思います。
講読書籍
・池内恵『現代アラブの社会思想』講談社現代新書、2002年。
・島薗進『現代宗教の可能性』岩波書店、1997年。
・アントニー・D・スミス『ナショナリズムの生命力』晶文社、1998年。
◇2004年度最終レポート一覧
(3年生)
・二重帝国成立にみるハプスブルク家オーストリア帝国の「民族観」―皇妃エリザベートと比較して―
・日本人の幽霊観
・憑きもの信仰に見られる女性差別
・補陀落渡海にみる日本人の他界観
・六・一五事件を巡る言説と新聞報道
・公的年金を通して見る不安とその要因
・京都のおみやげについて―おみやげの歴史と京都のおみやげの現状―
・アイヌ民族とその神々―人と神の関係性―
・日本における衣服の変遷と女性の歴史
・ギャンブルと社会の関係
・薩摩藩と佐賀藩における朝鮮渡来陶工政策の比較
・名字の歴史とそのおかれかたの推移
(4年生)
・植民地期朝鮮におけるキリスト教の発展と文化擁護運動との関係について
・感情労働―心のこもった接客が労働者にもたらす影響―
・アマルティア・センと権原アプローチ―ベンガル飢饉とグローバリゼーション―
・山本文緒論―『あなたには帰る家がある』に見る女性の結婚観―
・オウム真理教の輪廻観とカルマ理論について
・ベルギーの言語政策 ―フランデレンの誕生と行方―
●2003年度
(授業概要/テーマ)生命倫理の現在
脳死臓器移植、ヒトゲノム、クローン問題、ES細胞など、生命を巡るニュースは毎日のように聞かれます。その技術的な進歩もさることながら、その進歩に「どのように向き合うか」がこれからの課題といえるでしょう。
この演習 では「生命倫理」についての文献を輪読し、理解を深めます。いわゆる「生命倫理学」のみならず、医療社会学、科学哲学、宗教学、死生学の知見からも多くを 学ぶことになるでしょう。この問題は正解もないし、簡単に結論が出せるような代物ではありません。だからこそ、みなさんの積極的な討論を期待します。担当 者がレジュメを作成し、それをもとに議論します。
なお、このゼミではそれぞれが一番興味を持っている文化的事象について調べ、その成果をみんなの前で発表する機会を作りたいと思います(年度末頃)。4回 生諸君は主に卒論のことを、3回生諸君は興味の赴くまま自分で調べていってください。それをまとめたものが最終レポートになります。
講読書籍
・森岡正博『生命学に何ができるか-脳死・フェミニズム・優性思想』勁草書房、2001、\3,800
・林真理『操作される生命-科学的言説の政治学』NTT出版、2002、\2,800
◇2003年度最終レポート一覧
(3年生)
・女はなぜやせようとするのか
・英独聖書の比較 ―ルター訳聖書とティンダル訳聖書―
・宝石療法―ホリスティック医学の視点から
・国境を越える売買春問題 ―東南アジア・日本―
・表現的個人主義と女性
・パックス・ブリタニカにおける対外政策(対日政策を含む)と明治維新期における日本への影響
・経営者から見る『論語』哲学
・夢と認識
・セクシュアリティーの多様性~理想的な社会を求めて~
・一九八〇年代末から一九九〇年代なかばまでのミステリについて―第三の波と虚構の時代―
・養子と里子
(4年生)
・長崎・五島列島福江島におけるカクレキリシタンの現状報告
・カリブクレオールの「声」~ポストコロニアリズムの視点から~
・年少者のための日本語教育・「生活言語」から「学習言語」へ
・江戸時代の艶句の中に見る俗信考
- [2013/02/20 20:43]
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「最後」のゼミ冊子
本日、ゼミの「最後」のレポート集が完成した。目次は以下の通り。
・現代における若者と音楽の関係
・江戸浅草寺の開帳
・新しい観光の一形態としてのグリーンツーリズム―奈良・京都・滋賀の事例から
・江戸時代の仲人―『世間仲人気質』を中心とした比較から
・「若者右傾化」論の批判的検討
・聖書から見るキリスト教における女性観─新約聖書・マグダラのマリア編─
・アメリカにおけるイスラーム組織による活動─非イスラーム教徒との相互理解に向けて─
・日本人とスピリチュアリティ─「心のノート」を中心に─
・琵琶湖疏水事業と京都の景観
・慶安三年と宝永二年の伊勢群参
・現代フランスのムスリム移民統合問題にみる「共和国」理念の一考察
今年は、最後の学年と言うことで4年生だけ、一番薄い冊子となり、少し寂しい。
では、この冊子の後書きをそのまま貼り付けて、「国際文化学科川瀬ゼミ」の最後としたい。このブログも、今回で更新を終了するつもり。
この小冊子は、僕が演習を担当し始めた2003年から作り、今年で8冊目となる。そして残念ながら、国際文化学科は閉じられることになり、この冊子も最後のものとなる。
異論はあるかもしれないが、僕自身は、大学教育において演習(ゼミ)というのは、根幹のものと思っている。というのも、単なる知識伝授の場ではなく、友人たち(教員も含む)との人格的な交流こそが、大学教育が他のものと最も違う点だと信じているからだ。そしてその足跡を後に振り返るよすがとして、毎年このような冊子を作ってきた。
そして改めて8年間の軌跡を振り返って、僕は幸せな教員だったな、という思いを新たにしている。「さよならは別れの言葉じゃなくて、再び会うまでの遠い約束」という歌詞が昔の流行歌であったが、まさに君たちにはそのような気持ちでいっぱいです。
それでは皆さん、さようなら。また会う日まで。
言いたいことはたくさんあるけど、たくさんありすぎるので、敢えて言葉は少なめにする。
それでは皆さん、さようなら。
- [2011/02/15 14:25]
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さよなら、「ゼミ合宿」よ
それでも複数の女子学生は、メイクもばっちり。むさ苦しいすっぴん及び無精ひげで堂々としていられる男子とは、やはり気合いが違う(良いか悪いかは別にして)。
二日目最初の発表はF田さんの「明治京都の景観問題と琵琶湖疎水」というもの。彼女は明治の大事業といわれる「琵琶湖疎水」がどのように計画され、周りの景観に影響を与え、そして今日それ自身が「文化的景観」とされるようになってきたか(蹴上の水道橋なんか、船越英一郎がいつでもいそうな感じがするくらい、京都の風景、となっている)、という問題設定で、歴史を色々調べているところ。確かに色々調べてはいるのだが、「こういう計画だった」「こういうことが言われた」というのは判ったが、結局「結果はどうだったのか」ということがいまいち判りづらい、というのがみんなの意見であり、僕も同意して、章立てやタイトルを再考するように求める。

そして最後の発表者はOS木さん。発表題目は「江戸時代の仲人―『世間仲人気質』を中心とした比較から」。彼女は江戸時代の文藝をやっているので、本来の指導教員は僕ではないが、時々彼女のように「二つ目のゼミは楽しみたい(?)」というのが毎年のようにいるんだよね。彼女は、当時の仲人に関するイメージの変遷を浮世草子や雑俳、教訓書、礼法書などから探し出し、「気質物(かたぎもの)」と呼ばれるジャンルの中から『世間仲人気質』という作品を取り上げ、ネガティブなイメージが多い中、それなりの肯定的な評価も含んだオムニバス形式のこの物語を読み込もうとしていた。僕は当然ろくなアドバイスはできないのだけど、『世間仲人気質』が様々な仲人イメージのいわば結節点になっているという方向で考えたら、とは申し上げた。

今日、最後の発表が終わった後、僕は心の底から学生諸君に感謝の言葉を述べた。僕はこの大学でゼミを持って8年目だが、いつも僕が一番楽しませてもらった。本当にぼくは学生に恵まれたと思う。僕が教員生活を始めたこの大学で、このような幸せな経験を積ませてもらったことは、今後も僕の回帰するべき「原点」となるだろう。
さすがに涙は出なかったが(これからの卒論指導を思うと、そんなものは出ない)、しみじみ寂しい。
英語学専攻の同僚が、この前の卒業式の時におっしゃっていた「I am proud of you.」という言葉、一足早いが皆さんに捧げます。本当にありがとう。
- [2010/12/19 23:14]
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最後のゼミ合宿
今回の合宿は久々のこの施設訪問というだけでなく、もう一つ感慨深くなる理由があった。というのも、僕が今奉職している某大学文学部国際文化学科という学科が、学部学科の再編成で3年前に募集停止になり、今の4回生が最後の学年となったからだ。つまり「国際文化学科川瀬ゼミ」というのは今年で最後。2005年から合宿は行なってきたが、6回をもって終了、ということになる。毎年発表して討論してお酒飲んで(飲み過ぎて)、翌朝這々の体でも発表して意見を出し合うという、自分でいうのも何だが、実に「大学生」らしい場を作ってきたと自負している。

まず一人目はS原さんの「聖書から見るキリスト教における女性観」という発表。いわゆる「フェミニスト神学」を彼女なりにまとめてきた、という感じの発表。僕も以前この手の本は結構読みあさった(それを今彼女に貸している)。一番読みやすくまとまっているのは、荒井先生のこの本かな。
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ゼミも大詰めとなり、鋭いピアレビューが飛び交うのは素晴らしいことだ。それを見ているとき、教育者としての至福の瞬間でもある(マジで)。特に今回ゲストで来たOGのお二人がこういう場から離れて一年近くになるというのに、鋭い質問をして感心させられた。やはり、優れた卒論をともに書いた彼女たちはそれなりのものを獲得して社会に羽ばたいてくれているんだなあ、とこれまた感慨にふける。僕からの指摘としては、まず、新約聖書の女性観というのは、結構やり尽くされている分野だから、新味を出すのが大変であるということ、「女性の扱いは他のラビとは違うイエス」というのはよく分かるのだが、「男女平等」という「近代的」なタームを不用意に差し挟まないように指示。あと、コメンテーターのI田君の「男女平等がアピールとなったのか、不平等こそが魅力というパラドックスが宗教にはないか」という質問を拾って、倫理というものが不均衡、不平等、恩知らずな振る舞いから生じることを説明。
二人目はM嶋さんの「おかげ参りの源流と御師」という発表。いわゆる熱狂的な超弩級の伊勢神宮への参拝を「おかげ参り」と呼び、それは数え方で3回か4回江戸時代に生じたとされるが、彼女はその端緒をなすとされる慶安3(1650)年と宝永2(1705)年を取り上げ比較することにより、「おかげ意識」とでも呼ぶべき意識の情勢と、それに御師がどのように関わったかというのを様々な日記や記録の断片から推測しようとしたもの。僕などは、以下の西垣先生の古典しか読んだことないんだけど。
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僕からはいわゆる集団参拝の「20年周期説」と「60年周期説」「式年遷宮がきっかけ」説などを批判的に検討せよと注文。
二人の発表が終わり、コンビニに少し買い出しに行き、6時からはまずは宿の鍋に舌鼓。

その後お風呂に入り、9時頃からは毎年恒例のエンドレス宴会に突入。

こうして「最後のゼミ合宿」の夜は例年通り更けていった。酒とおしゃべりと暖房の乾燥した空気のせいで喉がガラガラになるのもまた例年通りか。
- [2010/12/18 22:23]
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ムスリムとフランス「共和国」
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フランス革命以来の「共和国」理念が、政教分離(ライシテ)を要求して今日まで来ているわけだが、周知のように「スカーフ」問題に端を発したムスリム問題がフランスの「共和国」理念に変容を迫り、またその理念と現実との乖離があらわになってきている、というのが今日の発表の趣旨。このあたりは、昔僕もちょっとだけお話しさせていただいた宮島喬先生がまとめられている。
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H野君は結構18,9世紀にまでさかのぼって、これまでの共和国の「政教分離」の歴史を追いかけてきているのだが、いかんせん、それを現状分析と比較になかなか使いこなせていないのが惜しい(そこが卒論の肝になるであろう)。特に、樋口陽一先生や中野裕二先生の研究を道「応用」するかがキーとなると思う。
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今日は欠席者も多く、僕も体調がいまいちで申し訳ないことをした。が、実は今日は「教室で行う国際文化学科川瀬ゼミ」の最後なのだ。今週末、ゼミ合宿で残りの諸君に発表してもらい、それでほぼ日程は終了なのだから。ということで、痛む胃を押さえながら少しセンチメンタルになる。
- [2010/12/13 19:14]
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音楽を語る方法
発表タイトルは「現代における若者と音楽の関係について」というもので、ざっくり言うと、現代若者の「音楽消費」はどのような機能を担っているか、ということを考察したもの。60年代、70年代にはロックやフォークはそのまま広い意味での「政治」と結びつきやすかったわけだが(ウッドストックやフォークジャンボリーを見よ)、現代の若者は「自分探し」やら「アイデンティティ」と結びつけて音楽を聴いていると言えるのだろうか、というのがスタートライン、かな。「上流社会はクラシック、下層はロック」というように分かり易い状況は日本では当てはめられないだろうが(イギリスのカルスタの悪い例を真似しても仕方がない)、全く影響が無いとも言えない。日本みたいな社会構造では、音楽を社会的状況と結びつけて語る方法に非常な困難が伴わざるを得ないわけだ。
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![]() | ポピュラー音楽へのまなざし―売る・読む・楽しむ (2003/05) 東谷 護 商品詳細を見る |
この東谷さんのをどう利用し、越えるかだな(越えがたいだろうが)。
僕なんか、彼の発表では「空白地帯」となっていた80年代に自我を形成した人間なので、ちょっとどう分析されているのか、という学説史も聞きたかったところ。探すと、結構参考文献はあるもんだ。
![]() | 抵抗の快楽―ポピュラーカルチャーの記号論 (SEKAISHISO SEMINAR) (1998/07) ジョン フィスク 商品詳細を見る |
![]() | サウンドの力―若者・余暇・ロックの政治学 (1991/11) サイモン フリス 商品詳細を見る |
![]() | ポピュラー音楽と資本主義 (2007/07) 毛利 嘉孝 商品詳細を見る |
彼には、60年代、70年代の新聞記事の博捜と内容分析を課した。でないと、先行研究のまとめに終わってしまうので、せめていくつかは直に資料を引いてこないとね。あと、アドルノをどう換骨奪胎するか、という問題もあるな。彼の音楽受容理論って、僕は全く知らないけど、面白い分類法をしているみたいだから。
![]() | アドルノ 音楽・メディア論集 (2002/10) テオドール・W. アドルノ 商品詳細を見る |
- [2010/12/06 18:10]
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若者「右傾化」論の皮膜
![]() | 「若者論」を疑え! (宝島社新書 265) (2008/04/09) 後藤 和智 商品詳細を見る |
彼は主に朝日新聞の記事などを参照にしながら、その言説の「盛衰」をクロノロジカルに観察しようとしている。あんな例も、こんな例も、という手法は、ある意味小熊チック(笑)とも言えるが、言説分析をしようと思ったら、ある程度の「量」をこなさないと話にならないのも確か。
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今日の発表は論理的な破綻が無く、みんなも突っ込むのに苦労していたようだが、今後はどうやって先人たちを超えるオリジナリティを出すか、だな(どんなにできの良い卒論にも言えるのだけど)。
以下の本は彼が参照にした代表的なものだが、みんな、僕のネット上の知り合いなんだよね(実際にお会いしたことはないけど、メールやブログでの交流はある)。
![]() | 嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス) (2005/02) 北田 暁大 商品詳細を見る |
![]() | 不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y) (2006/04) 高原 基彰 商品詳細を見る |
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- [2010/11/29 23:43]
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Muslim in U.S.A.
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僕もこのあたりの動きは全く知らず、基本的に事実関係は彼女に教えられる一方だが、学生諸君からも、事実関係、データの羅列の発表に少し不満を抱いたのも確か。要するに、分析部分が少し足りないのだ。このことは先週の相談の時も少し指摘したのだが、やはりまだ分析の元となる状況証拠を集めきるに到っていないことが原因。例えば、様々なグループの公式見解を集めて、どのような方針を持っているかなどの「声」が聞こえてこなかったことも、みんなが不満を持った大きな理由だろう。また、エスニシティとムスリムコミュニティの相関関係を上手く説明できていなかったことも惜しまれる(僕が質問したのは、シーア派コミュニティにおけるイラン系の動向とか)。
しかし、目の付け所は良いし、頑張ればそれだけでオリジナリティが出る素材だから、一歩一歩しっかりデータを分析していって欲しい。
- [2010/11/22 18:37]
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スピリチュアリティについて
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今回彼女は葛西さんの研究をそのまま引用して、AA(アルコホリックス・アノニマス)について論じようとしたのだが、スピリチュアリティとは何か、を問うことなく、論点先取りで「AAにはスピリチュアリティがある」からスタートしているので、トートロジーになってしまい、残念ながら自滅。あるかないか、あるとしたらどんな点かは、最後に結論としていうべきものだと説教。
コメンテーターのOS木さんが素晴らしいコメントをしてくれたので、多少救われたが。OS木さんは、AAからもっと宗教色を抜いて、非匿名・会費制で運営される日本の「断酒会」の事例を持ってきて、何故このような違いが出るのか、ということを考えては、とコメント。これには、去年ゼミで読んだ友人小池君の以下の本も参照されていた。
![]() | セラピー文化の社会学 ネットワークビジネス自己啓発トラウマ (2007/08/29) 小池 靖 商品詳細を見る |
とにかく、AAだけでは論文が書けないので、根本から考え直すようにと諭して今日は終了。どっと疲れた。
- [2010/11/08 18:46]
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信仰と行楽の間
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- [2010/10/25 18:54]
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